企画総務委員会のご報告の続きです。
9月定例会に出し直しされたハラスメント防止条例について、委員間で特に問題視されたのは、議員からのハラスメント相談等の対応についての次の条文です。
第14条 議長は、議員からのハラスメント相談に対応するために必要な体制を整備するものとする。
2 議長は、議員からハラスメント認定の申出があったときは、速やかにハラスメント認定について調査し、ハラスメント相談の解決に向けた迅速かつ適切な対応を行うものとする。
市が行ったハラスメントに関するアンケートに議員もハラスメントを受けているという回答が1件あったことを受けて、この条項を盛り込んだものと思われますが、議員からの相談対応について具体的にどのような体制を整備するのかは何も規定されておらず、条例施行日の10月1日に議員がハラスメント相談をしたくても相談窓口も用意されていません。
また、議員がハラスメント認定をしてほしい場合、議長が調査をすることになっていますが、直接調査するのか外部に調査委託するのか、そんなことは議会の中でも話し合ったこともなく、議会がこの数日間で対応できるはずのないことを市長が勝手に盛り込んできたことに対しては怒りすら覚えます。
この点(議員からの相談対応)を盛り込むことに関して、市長はじめ執行部からは、事前に議員からの意見聴取を検討したかったが議会事務局から本会議で議案提出して議案審査、議決するのが通常の流れだと言われ、議員との協議はできないということだった。コミュニケーションをとろうとしなかったわけではなく議会を軽視していない。詳細は議会で議論をしていただければいいので、基本的なことしか書きこんでいないとの答弁がありました。
しかし、「議員からの相談対応については別途規定する」程度の条文であればまだしも、先に記したとおり、条例施行日までに相談窓口や申立ての対応を構築するのは合議機関である議会では不可能です。
また、執行部から議会事務局にあったという議員からの意見を聴取したいという相談は、正確には議員からの相談対応に関してではなく、条例全体についてであったとのことです。条例全体について、その策定段階から議員の意見を聴く気があるのであれば、6月に議案を取り下げたりせずに議会に任せればよかったのです。
さて、この質疑の最中に山本副市長からは「複数の議員にはこういう議案を出したいという相談というか意見は聴かせてもらった」という発言がありました。一部の議員だけの意見を聴いていたというのは公平な議会運営を損ねるもので、かつて議会事務局長を務められたこともある副市長の対応だけに非常に残念なものです。
また議長からも「議員の部分も入れたいということは聞いていた。皆に伝えたらよかったが、出てきたときに議会で考えたらいいと思った」という発言がありました。しかし、議会で考えたらいいという割には、企画総務委員会でも議長からはこの部分について議員間で議論しようという提起はありませんでしたし、むしろ議員の相談対応に関する部分だけを削除する修正動議を本会議に提出すると同じ会派の委員に言わせてさっさと賛成してしまいました。
しかし、修正すべき部分は14条だけにとどまりません。
報復人事を恐れてハラスメント被害者が申立てしにくい状況にあり、ここをきちんと制度設計しないと「仏作って魂入れず」になってしまいかねません。
本市においては被害者から依頼を受けた第三者が代わって申立てを行った事例がありますし、実際に代理申立てを認めている自治体もあります。そのような「使える」しくみは条例に書き込むべきです。(ちなみにこのしくみが優れているとして、職員表彰制度に応募したのに、不受理となったことが情報公開で判明しています。委員会では提出締切を過ぎていたためと答弁されましたが、実際には応募件数が少なく各課に期限を過ぎての追加提出を認めていたこともわかっています。こういうことをするから組織の信頼を失うのです。)
また第12条では、ハラスメントの認定調査は外部機関に市長は「委託することができる」と「できる」規定になっています。
実際の委託に係る事務手続きは人事課が行うとしても、かりにハラスメント行為者が市長であったり、市長のお気に入りの職員であったりした場合、人事課の職員による忖度が働いて内部調査、非認定で済ませようということも考えられます。申立者が希望すれば「委託しなければならない」という規定が必要だと考えます。
今回の条例案をつくるにあたりせっかく職員アンケートをとったのですから、議会に議案を提出する前に職員に「この条例案でいいか?」とご意見を伺うくらいのことをすればもっといい条例案が出てきていたかもしれないのに、行政も中身より制定優先になっているように感じますし、議会もそれに追随してほしくありません。
まずいところがあって困るのは職員なんですから「また直したらいい」程度の認識で条例を制定しないでいただきたいのです。しかも職員がまずいと感じているかどうか、議会はどうやって把握することができるというのでしょう?
委員会では継続審査の動議があり、賛成多数で可決しましたが、本会議ではどうなりますやら。こんな条例、全会一致でいいいものを作らなきゃいけないでしょうに、粗を残したままの修正案なんて可決させてもロクなことはありません。
■企画総務委員会での継続審査に対する賛否(敬称略。山下委員長(生駒市議会公明党)は採決に加わらず。)
賛成:福中(凛翔絆)、竹内(日本共産党)、神山(無所属の会)、芦谷(日本維新の会)
反対:吉村(凛翔絆)、改正(凛翔絆)